アウトドア用品のパタゴニア創業者と家族が、全株式4300億円相当を寄付したとのこと。
パタゴニア創業者、全株を環境NPOに寄付 4300億円(日本経済新聞)
現在、パタゴニアジャパンのホームページ(patagonia.jp)にアクセスすると、パタゴニア創業者からのメッセージのページ(patagonia.jp/home)に行くようになっています。
本文の書き出しは、
「私はビジネスマンになりたいと思ったことはありません。クライミング用具を友人や自分用に作る職人から始めて、後にアパレルの世界に入りました。」
とあります。私はこの部分にまずは反応してしまいました。私と同じだなぁと思ったからです。私のことを同じように書くとすると、
「私はビジネスマンになりたいと思ったことはありません。プログラミングをはじめて、その楽しさにはまり、後にインターネットの世界に入りました。」
今回のスキームは、
Patagonia Purpose Trust(新設) すべての議決権株式
Holdfast Collective(環境保護団体) すべての無議決権株式
ということなので、配当はすべてHolodfast Collectiveにいくかと思いきや、Q&Aには、
「Holdfast Collectiveは会社の98%とすべての無決議権株式を保有しています。Patagonia Purpose Trustは会社の2%とすべての議決権付株式を保有しています。」
とありますので、配当の2%は、Patagonia Purpose Trustにいき、運営費を賄う、ということのようです。
事業承継は、特に利益至上主義ではない会社においては、なかなか難しい面があります。承継者が創業者の意思を引き継がずに、利益追求、特に個人の利益追求に走ってしまうようなこともあります。私も見たことがあります。
そんな私から見て、今回のスキームの心配な点をあげるとすれば、
1)環境保護団体に今後、毎年結構な額が入ってくるようになり、団体の役員が高給を取ったり、贅沢をするようになってしまう。この場合、配当を減らせばよいが、配当を減らすとPatagonia Purpose Trustの運営費が賄えない可能性がある。
2)環境保護団体が株式を高値で転売してしまう。
(株式譲渡制限をかけているとは思いますが、Patagonia Purpose Trustの役員をうまく抱え込むなどすれば可能ではないか。あるいは環境保護団体が自身を売却するなど)
3)Patagonia Purpose Trustがよくない人に乗っとられると、パタゴニアの役員人事に悪影響が出たり、業績悪化につながるおそれがある。
つらつら思いつくままに書きましたが、私が書いたようなことは、創業者も弁護士をまじえて対策を考えていると思います。パタゴニアのこのような斬新ですばらしい取組が成功することを祈っています。
ただ、創業者が相談した弁護士が実は悪い奴で、創業者亡き後、甘い汁を吸ってた、なんていうテレビドラマのような展開も想像してしまいます(笑)