最近のAIは、質問すると答えてくれるだけではありません。
今回試した「Energy」は、ブラウザを実際に操作して仕事をしてくれるAIエージェントです。
つまり、
「Amazonで条件に合う商品を探して、カートに入れて」
とか、
「JALの特典航空券を探して、予約確定の直前まで進めて」
という指示ができます。
これまでAIを使うというと、
「調べてもらう」
「文章を書いてもらう」
といった使い方が中心でした。
Energyはそこからもう一歩進んで、
人間の代わりにパソコンを操作する
というAIです。
今回は、
- Amazonで車載スマホホルダーを選んでカートに入れる
- JAL国際線特典航空券を探して予約直前まで進める
という2つを試してみました。
作ったのは20代前半の元OpenAI研究者
Energyを作った中心人物は、スウェーデン出身のGabriel Petersson。
まだ20代前半です。
Midjourneyでソフトウェアエンジニアとして働いた後、OpenAIに入り、動画生成AI「Sora」の研究に携わっていました。
OpenAIのSora公式ページにもGabriel Peterssonの名前がContributorとして掲載されています。(OpenAI)
その後OpenAIを退職。
そして2026年8月6日、Energyを公開しました。
Energyの公開日は8月6日で、公開時の報道でも確認できます。(Dealroom.co)
公開時にPetersson本人はEnergyについて、
Requires no complicated setup, and runs in your signed in browser.
と説明しています。
日本語にすれば、
「複雑なセットアップは不要で、ログイン済みのブラウザ上で動く」
ということです。(LinkedIn)
ここがEnergyの大きな特徴だと思います。
現在はMac版のみ
なお、2026年8月21日現在、EnergyはMac版のみです。
私はMacにEnergyをインストールして今回の実験をしました。
Windowsユーザーは現時点では利用できないので、この点は注意が必要です。
まだ公開されたばかりの製品ということもあり、今後対応OSが増える可能性はあると思います。
初期設定はかなり簡単
Energyを使うために、特別な開発環境を作る必要はありませんでした。
Chrome拡張機能を別途インストールする必要もありません。
EnergyのMacアプリをインストールすると、画面の中に、
- Assistant
- Browser
- Files
という機能があります。
そして、この「Browser」をEnergy自身が操作します。
重要なのは、単なるAI用の空っぽのクラウドブラウザではなく、ユーザーがログインしている実際のブラウザ環境を使って仕事ができることです。
AmazonにログインしてあればAmazonを操作できる。
JALにログインすればJALを操作できる。
Peterssonが「signed in browser」と表現しているのは、まさにこの部分です。(LinkedIn)
大まかな初期設定は、
- EnergyをMacにインストール
- ChatGPTなど利用するAIアカウントを接続
- BrowserでAmazonなど必要なサイトにログイン
- Gmailなどが必要になったら、そのサービスを追加でConnect
という感じでした。
プログラムを書く必要はありません。
Hermes AgentやOpenClawより、とにかく始めやすい
パソコンを操作して仕事をしてくれるAIエージェント自体は、Energyだけではありません。
たとえば、
- Hermes Agent
- OpenClaw
などがあります。
このあたりも非常に面白いです。
特にOpenClawなどは、自分のMac miniに入れて、スキルや記憶を追加し、自分専用のAIエージェントとして作り込むことができます。
ただし、そのぶん設定が必要です。
どのAIモデルを使うか決めたり、認証したり、必要に応じてAPIキーを設定したり、ブラウザ操作の環境を整えたりします。
Hermes AgentもOpenClawも、かなり「自分でAIエージェントを構築する」という色が強い製品です。
Hermes Agentは一般にLLMのAPI接続を設定して利用するタイプで、OpenClawもモデルや認証方法を自分で選んで構成します。(Artificial Analysis)
Energyはそこが違います。
私はすでにChatGPT Plusを契約しています。
そのChatGPTアカウントをEnergyに接続して使えます。
つまり私の場合、
Energyを試すためだけにOpenAI APIを別途契約して、APIキーを発行し、使ったトークン分のAPI料金を払う必要はありませんでした。
Energyの無料プランでもChatGPTアカウントを接続する方式が案内されています。
Energy自体にはPlusやProといった有料プランもあるので、「ChatGPT Plusに入っていればEnergyが何でも無制限に無料」という意味ではありません。
ただ、
すでにChatGPT Plusを契約している人がAIエージェントを試してみる
という点では、かなり敷居が低いと思います。
Hermes AgentやOpenClawを自分で構築するのも面白い。
でも、
「まずAIに実際のブラウザを操作させてみたい」
という人には、Energyが一番手軽だと感じました。
Claude Coworkとは何が違うのか
ここで思い出すのが、Anthropicの「Claude Cowork」です。
Claude Coworkも、単に質問に答えるだけではありません。
ファイルを読んだり、資料を作ったり、複数のアプリやツールをまたいで一連の仕事を任せることができます。
Anthropic自身もCoworkを、複数ステップの仕事をend-to-endで任せられるものとして説明しています。(Anthropic)
ですから、
「Coworkは自動化できないが、Energyは自動化できる」
という比較は正しくありません。
両方ともAIエージェントです。
ただ、実際に使ってみると思想がかなり違います。
Claude Coworkは、安全性をかなり重視しています。
ファイルや外部ツールに対して、どこまでClaudeに操作を許すかを細かく制御します。
Anthropicではツールごとに、
「常に許可」
「実行前に確認」
「ブロック」
といった権限を設定できる考え方になっています。(Anthropic)
さらにWebサイトをブラウザ上で操作させる場合には、Claude in ChromeというChrome拡張機能を利用する仕組みがあります。
AnthropicもCoworkの説明で、
WebアプリやダッシュボードではClaude in Chromeを利用する
と案内しています。(Anthropic)
Claude in Chromeは、Chromeの中をClaudeが読んだり、クリックしたり、入力したりするためのブラウザ拡張機能です。(Anthropic Help Center)
一方のEnergyは、最初からログイン済みのブラウザを操作すること自体が製品の中心機能になっています。
そのため私が実際に使った印象では、
Coworkは途中で人間の許可や確認を求められる場面が比較的多く、Energyは一度仕事を頼むと、そのままブラウザ操作を続ける時間が長い
と感じます。
ここはかなり大きな違いです。
これは「CoworkのAIが劣っている」という話ではありません。
むしろ設計思想の違いでしょう。
Coworkは、
「AIに仕事をさせるが、権限の境界は人間がかなり細かく管理する」
という方向。
Energyは、
「ログイン済みブラウザをAIに渡して、できるだけ人間を呼ばずに最後まで仕事を進めてもらう」
という方向に見えます。
今回AmazonやJALを操作させてみて、Energyの方が「人に仕事を丸投げする感覚」に近いと感じました。
まずはAmazonで買い物
Your AssistantでMain Assistantを使ってもいいのですが、ここでは、「+Add assistant」を押して「Amazon」というアシスタントを作って、最初に、こんな指示を出しました。
Amazonで車載用のスマホホルダーを買いたいので、カートに入れてください。ダッシュボードの上に置くもので、粘着テープはNGです。iPhoneの磁石でつくものがいいです。翌日配送必須。評価件数、評価ともに高いもの。できれば有名メーカー。
普通に人間に買い物を頼むような指示です。
型番もメーカーも指定していません。
するとEnergyがAmazonを開いて検索を始めました。
これが見ていて面白い。
画面には「Using browser」と表示され、EnergyがAmazonの商品一覧を実際に操作していきます。
商品を検索して、条件を確認して、候補を比較しています。
最終的にEnergyが選んだのは、LISENのMagSafe対応車載スマホホルダーでした。
価格は1,988円。
評価4.3で、レビューは8,000件以上。
そしてEnergyから、
「カートに入れました。」
と返事が来ました。
Amazonを見ると、本当に入っています。
さらにAmazonのカートを確認すると、
これは便利です。
Amazonには似た商品が山ほどあります。
「粘着テープは嫌」
「MagSafe」
「翌日届く」
「評価が高い」
「レビュー数も多い」
「できれば有名メーカー」
こういう条件を一つ一つ確認するのは、結構面倒です。
それを日本語でまとめて頼めば、Energyが探してカートまで入れてくれる。
今回は「カートに入れて」と指示したので、購入確定まではさせませんでした。
最終的なお金の支払いだけは人間が確認する。
こういう使い方はかなり現実的です。
次はもっと難しい、JAL国際線特典航空券
Amazonだけでは面白くないので、今度はかなり難しいことを頼んでみました。
JALの国際線特典航空券です。
しかも行き先も日にちも決めません。
Energyへの指示は、
JAL国際線特典航空券を、予約確定の直前まで進めてください。
東京発、1名、アジア、2026年10〜12月の3泊4日。基本マイル数で取れる便を優先し、エコノミー優先で探してください。
ワンタイムパスワードはGmailで受信できます。Gmailコネクトを使ってください。
というもの。
要するに、
「10月から12月のどこかで、アジアに3泊4日。マイルがお得なところを勝手に探して、予約直前までやって」
です。
かなり丸投げです。
GmailもEnergyに接続する
JALでは途中でワンタイムパスワードが必要になります。
そこでEnergyが、
「Gmailを接続してください」
と要求してきました。
EnergyにはGmailなどのサービスを接続する「Connect」という仕組みがあります。
これはブラウザ操作とは別です。
GoogleのOAuth画面が開き、Energyにどこまでアクセスを許可するか自分で選択します。
今回はJALから届くワンタイムパスワードを読むためなので、Gmailの閲覧権限を接続しました。
[スクショ:Successful connection画面]
このあたりは便利な反面、当然ながら注意も必要です。
AIにGmailやログイン済みブラウザを操作させるということは、それだけ強い権限を渡すことになります。
私は必要なサービスだけ接続し、購入や予約など重要な操作については最後を自分で確認する使い方がいいと思います。
JALのサイトをAIが延々と操作する
Gmailを接続するとEnergyはJALへ戻り、特典航空券の検索をはじめました。
国際線特典航空券の空席照会カレンダーへ進みます。
そしてアジア各都市の必要マイルや空席を調べていきます。
こういう作業こそ、AIにやってほしい。
人間が探すなら、
「10月の台北は?」
「ソウルは?」
「11月なら?」
「羽田は?」
「成田なら?」
「基本マイルで取れる日は?」
と何度も検索しなければなりません。
行き先も日程も決まっていない特典航空券探しは、とにかく面倒です。
Energyはそこを延々とやってくれます。
最終的に台北3泊4日を選んだ
Energyが最終的に選んだのは、
2026年10月1日
成田 8:55 → 台北・桃園 11:35
帰りが、
2026年10月4日
台北・桃園 10:25 → 成田 14:55
という3泊4日の旅程でした。
エコノミークラス往復18,000マイル。
税金・燃油サーチャージなどが43,660円。
羽田発では条件に合う基本マイルの席がなく、成田便を選択したとのこと。
さらにEnergyは、その便を選択して搭乗者情報入力画面まで進めました。
ここでは氏名なども自動で入っています。
この先はパスポート番号、有効期限、国籍などが必要になるので、今回はここで終了しました。
指示も、
「予約確定の直前まで」
としていたので、勝手に航空券を発券されたわけではありません。
AmazonよりJALの方が衝撃だった
Amazonで本当に商品がカートに入ったのも驚きました。
でも、個人的にはJALの方がずっと衝撃的でした。
Amazonの商品選びなら、
「ChatGPTにおすすめ商品を聞いて、最後は自分でAmazonを開けばいい」
とも言えます。
ところが特典航空券は違います。
大量の日付と行き先を何度も切り替えながら検索する必要があります。
これは「知識」の問題ではなく、
作業量の問題
です。
従来のAIは、
「台北がおすすめです」
とは答えられても、
JALにログインして、
空席照会を開いて、
日付を変えて、
都市を変えて、
必要マイルを比較して、
便を選んで、
予約画面まで進む、
という仕事はしてくれませんでした。
Energyはそこをやります。
しかも、Claude Coworkなどを使っている時と比べても、途中で私を呼び戻す回数が少なく、
「あとは任せた」
という感じで長く動いてくれました。
ここにEnergyらしさを感じます。
「調べて」から「やっておいて」へ
AIの使い方が変わってきた、と感じます。
これまでは、
「これを調べて」
でした。
これからは、
「これをやっておいて」
になっていくのではないでしょうか。
人間は目的だけ伝える。
「Amazonで条件に合うものを買いたい」
「10月から12月でアジアに3泊4日、マイルがお得なところへ行きたい」
AIがブラウザを操作して、面倒な途中作業を全部やる。
そして最後の、
「本当に買うか」
「本当に予約するか」
だけを人間が判断する。
これはかなり合理的です。
Hermes AgentやOpenClawのようなものを自分でMac miniに入れて、モデルやスキルまで細かく作り込むのも面白いと思います。
Claude Coworkのように、権限を細かく制御しながら安全に仕事を任せる方向もあります。
それぞれ違う良さがあります。
でも、
「AIエージェントって、結局どんなものなの?」
という人が最初に体験するのであれば、Energyは非常にわかりやすい。
Macにアプリを入れる。
普段契約しているChatGPTをつなぐ。
ログイン済みのブラウザを使う。
そして普通の日本語で、
「これ、やっておいて」
と頼む。
それだけで、とりあえずここまで動きました。
創業者自身が言う、
「複雑なセットアップ不要で、ログイン済みブラウザ上で動く」
という設計思想は、確かに実際の使い勝手にも表れていると思います。
AIエージェントとはどんなものなのかを体験する入口として、今のところEnergyが一番手軽だと感じました。
2026年8月6日に公開されたばかりなので、まだ動作がおかしくなる場面もあります。
しかも現時点ではMac版のみです。
それでも、公開からわずか2週間ほどの製品が、Amazonで商品を選び、JALの特典航空券を探して予約画面まで進めてしまう。
「AIに質問する時代」から、
「AIに仕事を頼む時代」へ。
かなり面白くなってきました。






















