先日、東京から松山への便をANAの特典航空券でWeb予約しました。ところが予定が変わり、キャンセルしようとしてもWebからできない。電話もまったくつながりません。
そこで搭乗日を11月まで先送りし、いったんペンディングにしました。
何が起きているのか
調べてみると、個別のバグというより、大規模なシステム移行の影響のようです。
ANAは2026年5月19日から、約半世紀使ってきた国内線システム「able(エイブル)」を退役させ、国際線で使っていたアマデウス社の「Altéa(アルテア)」へ統合しました。Altéaは多くの航空会社が採用する世界標準のシステムです。
移行は空港ごとに順次進められ、新旧システムが混在する不安定な時期が続きました。しかも同時に運賃制度も刷新したため、オンラインチェックインや座席指定などで不具合が広く発生。問い合わせが殺到し、電話はつながりにくく、メール返信にも長期間を要する状態になったとANA自身が告知したようです。
私がWebでキャンセルできず、電話もつながらなかったのは、この混乱の一部だったわけです。
6月末の株主総会では、主な不具合は7月末までにおおむね解消する見通しと説明されたと報じられています。11月まで先送りすれば、その頃には普通にキャンセルできるだろうという見立ても、そう外れてはいなさそうです。
これはANAだけの話ではない
JALも2017年以降、アマデウスへの移行と旅客システムの統合を進めてきました。大規模なシステム移行では、予約停止やデータ移行に伴う混乱が避けられません。
一方で、両社が同じ基盤を使うことによる新たなリスクもあります。2025年12月23日には、アマデウスの世界規模の障害により、ANAとJALの予約・検索機能が同時に止まりました。
今回の混乱には二つの側面があります。
ひとつは、移行期に起きる一過性のトラブル。これは時間が解決します。
もうひとつは、同じ基盤に集約することで生まれる構造的なリスク。こちらは移行後も残り続けます。
電車の相互直通運転に似ている
この構造は、鉄道の相互直通運転によく似ています。
複数の路線がつながれば、乗り換えなしで遠くまで行けて便利です。しかし、一路線の小さなトラブルが、つながった路線全体に広がることもあります。
アマデウスへの統合も同じです。世界中の航空会社が同じ基盤を使うことで、連携はなめらかになり、新しいサービスも導入しやすくなる。一方で、中枢が止まれば、多くの航空会社が一斉に影響を受けます。
便利さと脆さは、同じコインの裏表なのです。
統合の良さと、分散の良さ
Tech系の会社を営む私にとって、これは他人事ではありません。統合と分散は、インフラ設計の永遠のテーマだからです。
統合すれば、運用コストが下がり、標準化によって連携や進化を取り込みやすくなります。ANAが自社システムを手放し、世界標準へ移行した判断そのものは、経営として理解できます。
一方、分散には倒れにくさがあります。どこか一か所が止まっても、全体は止まらない。手元に残しておけば、自分たちの判断で直すこともできます。
大切なのは、どちらか一方を選ぶことではありません。
中枢は世界標準に任せつつ、止まったときに現場が自力で立ち回れる余地を残す。すべてを一本化せず、要所には迂回路や手動の逃げ道を用意する。
便利さを取れば脆さがついてくる。脆さを避ければ、手間とコストが増える。
その間のどこに線を引くのか。松山行きのキャンセルひとつを通して、そんなことを考えました。
