第15回オタク川柳解説

第15回となるオタク川柳大賞のWEB一般投票がはじまりました。

グランプリ候補は、下記の20句となります。では今回も解説をしていきましょう。

●「ツイッターより まともですね」と 褒められる
(切子久兵衛:40代)
ツイッターで傍若無人に振る舞っている人が、会ってみると人の良さそうで優しい人だった、というのはネットあるあるですが、何か見てはいけないものを見てしまった感が残ります。

●銀魂が 終わったけれど 信じない
(終わった詐欺:50代)
人気アニメが終わってしまった喪失感と、それが復活したときの喜びと、その裏にある裏切られた感、その複雑な感情に、さらに今回終わったけれどまた復活あるよね?という期待感とそれって詐欺じゃね?という疑いが混じったカオスな感情をたった17文字とペンネームで見事に表現しています。

●アイドルに 無理しないでと あおられる
(鉄腕ATM:30代)
あおりに乗ってはダメ、というのは鉄則ですが、無理しないでと言われて、はいそうですか、わかりましたというファンはいないでしょう。乗らざるを得ない最強のあおりに鉄腕アトム、いえ鉄腕ATMはどこまで耐えられるのでしょうか?

●推しキャラが 名も無きモブで グッズない
何で推したんだろう:20代)
モブとは群衆のことで、そこからゲームやアニメなどで名も無きキャラ、昔の言葉でいえば雑魚キャラを指します。推しキャラがモブだと何のグッズも販売されませんが、将来、販売されたときの喜びはひとしおでしょう。ぜひそこまで推しつづけてください。

●ブックカバー 本と己を 守るため
有鯨太:10代)
ブックカバーで何を読んでいるかわからないようにして、他者からの自己評価を守ろうとする姿勢が青春ですね。おじさんになると最早………いえいえ、やめておきましょう。英語を上手に日本名のように見せているテクニック、江戸川乱歩を彷彿とさせるペンネームにもおじさんのハートがつかまれました。

●究極の 滅びの呪文 「ご報告」
(バルス!:50代)
結婚、解散、はたまた離婚など、「ご報告」というタイトルが来ると、びくっとしてしまう今日この頃です。昔ならワイドショーで発表されていましたが、ブログやtwitterなど、本人から直接ファン向けにメッセージが来るようになってから起きた現象ですね。

●異世界に 小遣いだけが 転生し
(貯金ゼロから始める異世界生活:30代)
最近はやりのジャンル、異世界ものは、基本的に異世界に転生してそこで新たな人生、たとえば勇者としての人生を歩む、というものです。自分も転生したいと思ってるのに小遣いだけ異世界に課金してしまった情景を、異世界に転生というトレンドにのせて上手く表現しました。

●路線図と乗りたい車両で 職決める
(霜月秋:20代)
そこまで路線と車両が好きなら、鉄道会社に就職したら?と思うのは素人考えで、乗客として乗りたいのです。そんな彼らにとって、会社所在地は最重要です。

●言わせてよ 匂わせるのが ダメなのよ
(熱愛がダメじゃないの:40代)
熱愛を匂わせるSNSは、わざとだとしたら、マウントを取りたいのでしょうか?それとも相手に対するプレッシャー?ネットには特定班と呼ばれる、ホテルやレストランを特定する過激な人たちもいますが、温かく見守る多くのファンの気持ちを大切にできる優しい人と結ばれて欲しいものです。

●もういない 銀縁 バンダナ 紙袋
(昭和の秋葉原から来ました:40代)
ラジオ会館もリニューアルされ、半田の焼ける臭いがどこからともなくして、コンデンサーや抵抗がたくさんあった昭和の秋葉原はもはや遠い昔。オタクも身なりに気を遣うようになりました。

●バーチャルに おじさん同士の 百合が咲く
(やさしい地獄:20代)
BLといえば、若いイケメン同士というのが相場でしたが、おっさんずラブなど近年は年齢制限が解禁されたようです。そんなリアルワールドですが、バーチャルなオンラインでは、女子に転生したおじさん同士が仲良くなるという光景もそこかしこに見られます。

陰キャには  ブルーライトが 光合成
(五十里義哉:10代)
リア充などの陽キャと対比し、陰キャと言われることのあるオタク。暗い部屋の中でじっとPCのブルーライトと向き合う姿を、光合成をしている植物かのように例えた映像美があります。

●人生は 萌え死ぬまでの 暇つぶし
(水曜:30代)
人生は死ぬまでの暇つぶし、という言葉は、高杉晋作が言いそうな言葉ですが、みうらじゅんさんが最初に言い出し、その後、いくつかのマンガで使われたという説が有力です。そこに、「萌え」を付けると、あら不思議。綺麗に575になった上に、哲学的な風味も失いませんでした。

●握手会 あっあっあっしか 言ってない
(CHINTAKU:30代)
握手会の神対応と言えば、一度会ったファンの名前を忘れずに、「○○さん、」「あっ(そうです)」「今日も来てくれたんですね」「あっ(そうです)」という感じで、「あっ」という間に終わります。

●ガチャガチャガチャ ガチャガチャガチャ…ケッ …ガチャガチャガチャ
(ターナー:30代)
ラスベガス空港にはスロットマシンがあり、成田空港にはガチャが300台以上あります。日本を代表するエンタメの一つですが、オンラインゲームでも、アイテムやキャラクターをゲットできる抽選のことをガチャと呼びます。ガチャの射幸性が社会問題になったのも成田空港にガチャが置かれた2016年でした。欲しいアイテムが手に入らず、「ケッ」となりつつ、さらにガチャを引いている様子が伝わります。

●人生は 山あり谷あり 沼もあり
(しじみ1個分のオルニチン:40代)
人生にはいろいろなことが起きるわけです。上りもあれば下りもある、という意味で、人生山あり谷あり、と言われますが、ここに沼が入って来ました。意味としては、人生には上りもあれば下りもあり、はまりもある、とでもなりましょうか?好きなものができて沼にはまる、これも人生の醍醐味の一つでしょう。

●やめなさい 胸に沁み入る 母の声
(アンチエイジング:30代)
もうそろそろ自分でもやめようと思ってるんです。でもやめられない。やめろということが逆効果になる場合もありますが、この作者には響いたようで、うまく沼から抜け出せたのか、結果が気になります。

●ぴえん、ふぇぇ? 俺は前から ぶ、ぶひぃぃ
(チャキチャキのアニオタ:20代)
2019年度のJC・JK流行語大賞の1位になった“ぴえん”を使った一句。様々な解釈が出来ますが「アニメの展開が“ぴえん”で“ふぇぇ?”になっても、私は決して動じない」という作品への強い愛が現れていると思います。

●キャプテンで エースで四番 そして受け
(たんか:40代)
キャプテンでエースで四番は少女漫画では花形王子様キャラですが、ボーイズラブ系マンガの世界では、キャプテンが受け(お姫様)になるようなギャップ萌えが喜ばれることもあるようです。

●<敗者復活枠> なんでだろ 昔戦隊 今変態
こんなはずジャー:20代)
戦隊ものは、1975年の「秘密戦隊ゴレンジャー」からはじまり、今や、ハリウッド映画になったり、アベンジャーズのように独立したキャラクターを集めて戦隊風にしたりなど、大流行です。戦隊ものにはまっていた作者が、今は、戦隊以外に興味を持ってしまった自分を変態と卑下しつつ、こんなはずジャーと呼ぶあたり、未だ戦隊から抜け出せていない郷愁を感じさせます。

以上、いかがでしたでしょうか?

読んだ方のハートにつきささるものがあれば、投票をお願いします。投票いただいた方の中から豪華賞品も当たります。

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