internetは無保証、ということはよく言われることです。
そもそもインターネットは、バケツリレーのようなもので、隣の人に渡したら、おしまい、という仕組みです。
隣の人が正しく動作してくれるか、わからないので、保証できない、ということです。
しかし、今や、インターネットはインフラになっています。
インフラと言えば、電力。
インフラが提供できなかった場合、どういう賠償責任をするのか、停電になった場合の電力会社の対応を見てみます。
「電力会社 損害賠償 約款」のGoogle検索で一番上に出た関西電力の約款で該当しそうなところを抜き出すと、
当社の責めによる場合
当社は、逸失利益等の間接損害を除き、通常かつ現実に発生した損害の範囲で賠償を するものとします。
というあたりが該当しそうです。
電力会社側の責任であっても、
逸失利益はダメ
通常かつ現実に発生した損害
ということです。ですが、この「通常かつ現実に発生した損害」という文言は、約款でよく見かける文言ですが、一体どういう意味でしょう?わかったような気がしますが、具体的に考えると難しいです。夜、電気が消えて、よく見えなくて転んで怪我したというのは、入るのか?入らないのか?冷蔵庫のものが腐ってしまったら?
たいてい、停電に対する備えは、停電時用のバッテリーを設置しておくなど、利用者が、利用者の負担で準備しています。
停電で損害賠償してもらったというのは、聞いたことがありません。(2018年にコープが停電の損害賠償請求を北海道電力にする、という話があったのですが、取りやめています。こちら)
電力会社の賠償責任について解説しているネットの情報を読む限り、ほぼ賠償してくれないという解釈のようです。
その代わり、というか、停電割引というものがあります。
1時間以上の停電があった日について1日あたり基本料金の4%割引
とのこと。
基本料金の割引なので、電力使用料金はしっかり取られます。ですので月額料金が無料になることは、なさそうですし、25日間停電しないと基本料金は無料にならないです。1ヶ月に25日も停電したらどうなるのか?という問題はありますが(笑)
さて、インターネットや通信の世界ではどうでしょうか?
インターリンクが営業をはじめた1995年頃は、
まったく保証しない。損害賠償は一切しない。
というのが主流でした。当社も大手通信会社の規約を参考に、そのような規約を作って運用していました。
その後、あまりに一方的な規約は消費者保護の観点から認められないということで、一切しないというのはダメ、ではどうするか?となりました。月に千円のサービスが1日止まった時、「株のオンライントレードで1億円儲け損なったから1億円損害賠償しろ」と言われても、さすがにそれは厳しい、というようなことから、損害賠償しない、から、損害賠償するけど、限度額を規定する、に各社ともなりました。
会社側に過失や故意があった時でも損害賠償責任は、最高でサービス料金まで、というのが主流になって現在に至っています。当社もそのようになっています。
また、損害賠償はサービス料金まで、というのは世界的に同じで、当社の扱うドメイン事業は、海外の会社とのやりとりも多いのですが、海外の会社もミスがあってもサービス料金まで、となっています。
つい最近ですが、ドメイン事業で当社のミスではなく、海外の上位組織のヒューマンエラーで、あるお客様のドメインが丸一日使えないという事象が発生しました。お客様から見れば当社のミスだろうが、上位組織のミスだろうが、ドメインが使えないというのは、大変なことです。機会損失、逸失利益があったであろうと考えられます。
私も大変申し訳なく思い、コロナ禍の中ではありますが、お客様にご説明にあがるよう担当に指示し、事情をご説明し、お客様にはご理解をいただいた、ということがありました。
このような場合、通信料であれば1ヶ月分の料金、ドメインであれば年間の登録料金を無料にする、ということをしています。
お客様にとっては、これでも全然不十分でしょうが、1年間まったくタダ働きになってしまうので、運営会社としては、かなり苦しいです。
電力会社の停電であれば、1ヶ月30日として1日停電で基本料金の4%割引、仮に1ヶ月30日すべて停電したとして計算したら120%になります。
ドメインが停電と同様の損害賠償だったらどうなるか、ですが、ドメインは年間料金ですので、1年間まったく使えなかった時に、120%分の損害賠償としたら、1日あたりは、
120 ÷ 365 = 0.33%
となります。千円につき3.3円、ドメインは1万円以下がほとんどなので、1日使えなくても33円以下となります。
こうやって比較してみると、インターネット関連の損害賠償額というのは、電力会社よりもかなり高いということがわかります。
24時間365日稼働監視しても、100%稼働は保証できないのが現実です。
お客様におかれましては、停電に備えて無停電電源装置を導入するのと同様、なんらかのバックアップをご自身で講じていただくようなことも検討していただければと思います。