今一番旬な職種はデータサイエンティストで、一番旬な学問は統計学だが、その第一歩すら踏み出せてないのが日本の現状かも知れない

移動平均という言葉を私が初めて聞いたのは、1990年代、東京銀行で為替予測のニューラルネットワークを構築した時でした。

移動平均とは、ある期間の平均を見るものです。たとえば1週間の株価の終値平均を出します。それを毎日やるわけです。株価のようなものは、ある日、ちょっと上がりすぎて、翌日にその上がりすぎを修正するために少しだけ下落する、というようなことがあります。そのような、行き過ぎを移動平均は調整してくれます。毎日見ていると、日々の数字に惑わされて傾向が見えにくいのが、最近は上昇傾向にある、とか下降傾向にある、ということがわかりやすくなるのです。

↑はドイツのテレビ局 zdf のニュースです。

タイトルが「Covid患者の94%はワクチン接種を受けていません」

とあります。まずここで、日本の報道だと、パーセントでなく、「ワクチン接種を受けた17人が」と、生の数字を使って、なおかつ、悪い情報、つまりワクチン受けても入院するということがあるというふうに報道していることがほとんどのように見えます。

また、本文中には、「ワクチン未接種の人々の7日間の発生率は」とあります。7日間でデータを取って、さらに割合(率)を使っています。日本のように、毎日毎日、生の数字を報道しているのと大きな違いです。

朝のNHKワールドニュースを見ていると、ヨーロッパの放送局は、感染者数を報道する時も、10万人あたりの7日間移動平均を取っていることが多く、統計的に意味のある数字です。

昨日、東京で何人でした、沖縄で何人でした、という報道に意味がないとは言いませんが、その数字だけでは、東京と沖縄でどちらが深刻なのかわかりませんし、曜日によって違うわけですから、増加傾向なのか減少傾向なのかもわかりません。

報道する側も、見る側も、移動平均や割合(パーセント)を重要視することが、本質の理解につながると思いますし、そのようなリテラシーを子ども達が持っている世の中になってほしいと思います。