第17回オタク川柳解説

わいだって 「一般男性」 なんだけど(※ただし、年収2,000万円以上に限る:30代)

美人女優さんが「一般男性」と結婚するニュースが流れますよね。ニューヨークに本社のある外資系金融企業に勤める30代、年収数千万円エリートサラリーマンを「一般男性」とされてしまうと、本当の一般人は立つ瀬がありません。

小松菜が 俺の元から 菅田ってく(けんちゃん:20代)

小松菜奈さんは、何度も共演した菅田将暉さんと結婚しました。若い女性から大人気の菅田将暉さんに小松菜奈さんを取られたのは仕方ないという諦めと絶望の中に、巣立っていく小松菜奈さんへの祝福が感じられます。

賭けるより 駆ける娘に 掛ける金(ウマおやじ@重課金:40代)

1990年代半ばに大ブームとなった、競走馬育成ゲーム『ダビスタ』(ダービースタリオン)。2022年現在は、擬人化された競走馬育成ゲーム、通称「ウマ娘」が大人気です。基本、無料で遊べるゲームなのですが、ハマるとどうしても課金してしまいます。このあたりの課金構造も90年代のダビスタとは隔世の感があります。

「サ終」です 夜襲メールに 野獣化し(泣くモンスター:30代)

「サ終」とはサービス終了のこと。オンラインゲームが人気がなくなって運営できなくなると、運営から突然、「サ終」のお知らせメールが届きます。ゲームの過疎化が進んでいて、うすうすわかっていたこととはいえ、よもやよもやなのはプレーヤーだけではなくモンスターも同じです。

気のせいか 目腰肩に 推しが効く(だら子:40代)

「指圧の心 母心 押せば命の 泉湧く」で一世を風靡した浪越徳次郎さん。マリリンモンローも治療したゴッドハンド。その押しよりも、推しの方が効くのですから、推しは偉大です。

社ではヒラ 家ではゴミでも 沼で神(空の青さにいきいきと:50代)

会社では冴えない窓際、家では亭主元気で留守が良いと言われていても、オタク方面では神と呼ばれる人物で、広島カープが大好きなのでしょう。

午前二時 物販漁る 推し貢時(鯖落ちF5連打マン:20代)

草木も眠る丑三つ時に、お買い物をしているのは、F5連打でサーバーダウンさせた、張本人なのか、それともサーバー復帰をたしかめるF5連打なのか、どちらなのでしょうか。

ヲタ殺す 最恐呪術 ネタばらし(おいなりさん:60代)

昨年は鬼滅の刃、今年は呪術廻戦で映画館は大盛況でした。ネタばらしは、やめようという意味を、今年風に言うと、こうなりました。このように、一般論をその年に合わせた表現とすることで、その年にしかできないオタク川柳作品となるという良い見本です。

ノーマルが わからないのに ニューノーマル(ノーマルって何?:50代)

「ニューノーマルとはなにか」というのが、禅の公案になりそうですね。師匠から問われた弟子が「新しいノーマルです」と答えたら、師匠に、「ではノーマルとは何か?」と問われてしまいます。死とは何かと問われた孔子が、「未だ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」と答えたように、「未だノーマルを知らず、いずくんぞニューノーマルを知らん」と答えれば満点ではないでしょうか?

におわせを 気をつけるのは 僕の方(めけちゃん:30代)

彼氏ができたことを直接言わずに、片隅に男性の腕や足などが写り込んでいる写真をアップする「匂わせ女」がクローズアップされましたが、たいていは、有名人男性とのお付き合いアピールでした。有名人でない「僕」は匂わせ対象でないのは明白で、それよりは自分の体臭の匂わせを気にしないといけないという自戒の句です。

おじさんの ブラ線見たが 大丈夫(時代ですから:40代)

個人の趣味嗜好に口を出すのは、ハラスメント認定されかねません。松尾芭蕉の難解な句「秋深き 隣は何を する人ぞ」と同じく、隣(おじさん)に対する興味なのか、同じ孤独を味わう連帯感なのか、味わい深い句になっています。

シン・シン・シン シン・シン・シン・シン シン・シン・シン(シン・ぴんくのかば:50代)

ゴジラもウルトラマンも仮面ライダーも、一周回って全部、新、ではなく「シン・」になっています。もちろん、シン・エヴァンゲリオンも忘れてはいけません。なんでもシン・をつければ、なんとかなるというのは、本当に正しいことなのか、深く考えさせられる一句です。「新・座頭市」、「新・兵隊やくざ」主演の勝新太郎さんにコメントをいただけないのが残念です。

頼むから そっとしといて くれますか(悦:50代)

現在オタクと言えば、そのコンテンツは海外でもビッグイベントが開催され、クールジャパンとしてもてはやされ市民権を得たとも言われています。しかし、かつては日陰の存在というイメージでもありました。そんなにメジャーになってほしくない、ひとり静かに楽しみたいと願うオタクも存在します。

オタ活の 最後の決め手は 実家ガチャ(切子久兵衛:40代)

子どもは親を選べない「親ガチャ」という言葉、これはゲームのガチャ運が強いオタクも変わりません。オタク活動を長く続けるには変わらぬ情熱の他、経済力、家族の理解なども必要となることがあります。しかしどのガチャを引いても楽しめる人はいるし、自分の力で道を切り開く人もいます。負けずにオタ活を続けましょう。

最期まで オタクのままの 父でした(よしりん:60代)

オタクとして生涯現役を貫いた父に寄せられた弔辞。
棺は、ご本人が埋もれてしまうくらい思い出の品で溢れていたのではないでしょうか。家族からも認められていたであろう、理想的なオタクの最期です。

「宇宙なう」 その頃オレは 「異世界なう」(こっちのが遠いぞ:50代)

前澤友作さんが「宇宙なう」をつぶやいた時、自分は「異世界」アニメかゲームかで楽しんでいた、という情景を描きつつ、異世界の方が遠いぞ、と前澤さんにマウントしようとする姿がかわいらしく見える、ほのぼのとした川柳です。

雄っぱいを 父が開封 無事死亡 ←New!(雄っぱいマウスパッド蒐集家:30代)

「雄っぱい」とは鍛え上げられた男性の胸部を指す言葉。
筋肉でがっちりと豊満になった男性の胸部をデザインしたマウスパッドが届いたが、自分よりも先に父が開封してしまい、図らずも雄っぱいマウスパッドコレクターであることをカミングアウトしてしまいました。
自分宛に送られてきたものは、家族の誰よりも早く確保しなければいけないことを思い知らされる一句です。

鉄オタの 「キイテ」は深く 問ワイライト(オタってやつは・・・:40代)

周遊型寝台列車TWILIGHT EXPRESS瑞風の先頭と最後尾は展望車になっていて、型式は「キイテ」。一度は乗ってみたい憧れの車両です。

五輪より 日本の奇跡 冬コミケ(元祖ボランティア運営:50代)

オタクの祭典コミケもコロナ禍で中止を余儀なくされていましたが、2021年年末の冬コミケは参加人数を大幅に制限して2年ぶりに開催されました。五輪よりコミケの方が大切というオタクの価値観が表されているとともに、自身が元祖ボランティアだという自慢も入っています。

不況なぞ どこ吹く風と する腐教(ちゅんすけ:40代)

BL好き女子は腐女子と言われます。腐女子が、友人に布教(腐教)して、その友人が転ぶ(転ぶとは江戸時代、禁教であるキリスト教の信心を捨てることから、BL好きになることを言う)ことを、腐の連鎖と言い、不況に打ち勝つ生命力を持っていきます。



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